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銀歯?セラミック?それともゴールド?被せ物・詰め物の選び方とメリット・デメリットを徹底解説

  • 審美歯科

こんにちは。熊本県上益城郡の歯医者、ひがし歯科医院の歯科衛生士 大野です。むし歯の治療が進み、いよいよ「詰め物」や「被せ物」を入れる段階になった時、歯科医師や私たちスタッフから「どのような素材にしますか?」と聞かれて、戸惑った経験はありませんか?「保険でできる銀歯でいいのかな?」「白い歯にしたいけれど、種類が多くて違いが分からない…」「高いお金を出して、すぐに壊れたらどうしよう」など、様々な疑問や不安が頭をよぎると思います。

歯科用語では、これらの詰め物や被せ物のことを総称して「補綴物(ほてつぶつ)」と呼びます。一昔前までは「奥歯は銀歯」が当たり前でしたが、現在は材料の進化により、保険診療・自費診療を含めて多くの選択肢が存在します。それぞれの素材には、見た目の違いだけでなく、耐久性、むし歯の再発リスク、お体への影響など、明確な「メリット」と「デメリット」があります。これらを正しく理解し、ご自身の価値観(見た目を重視するか、長持ちを重視するか、費用を抑えたいかなど)に合ったものを選択することが、治療後の歯の寿命を大きく左右します。

今回は、代表的な5つの素材(レジン、メタル、ゴールド、セラミック、ジルコニア)について、それぞれの特徴を徹底的に比較・解説していきます。後悔しない選択をするための参考にしていただければ幸いです。

目次

  1. 【レジン充填】保険で白くできる!小さなむし歯の救世主
  2. 【メタル(銀歯)】保険適用の定番。安くて丈夫だが抱えるリスクとは
  3. 【ゴールド(金歯)】見た目は目立つが、歯科医が自分の口に入れたいNo.1
  4. 【セラミック】圧倒的な美しさと清潔さ。むし歯再発を防ぐ最良の選択
  5. 【ジルコニア】人工ダイヤモンドの強度!割れにくい白い歯の新常識
  6. まとめ

1. 【レジン充填】保険で白くできる!小さなむし歯の救世主

まず最初にご紹介するのは、比較的小さなむし歯の治療で頻繁に用いられる「コンポジットレジン充填(CR)」です。これは、ペースト状の歯科用プラスチック(レジン)を、むし歯を削った穴に直接詰め込み、特殊な光を当ててその場で固める治療法です。

【メリット】 最大のメリットは、「健康保険が適用されるため安価」でありながら、「白い色で治せる」という点です。歯の色に似たペーストを使用するため、治療跡が目立ちにくく、前歯から奥歯まで幅広く使用できます。また、型取りをする必要がないため、「最短1回の通院(即日)」で治療が完了することも、忙しい方には大きな魅力です。さらに、むし歯の部分だけをピンポイントで削って詰めることができるため、金属の詰め物などに比べて、「健康な歯を削る量を最小限に抑えられる」という、歯に優しい側面も持っています。金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配もありません。

【デメリット】 一方で、素材がプラスチックであるため、「強度が低い」のが弱点です。噛む力が強くかかる奥歯の広範囲な治療や、歯と歯の間の治療には向かない場合があります。長期間使用していると、どうしてもすり減ったり(摩耗)、欠けたりすることがあります。また、吸水性があるため、お茶碗についた茶渋のように、経年劣化によって「変色・着色(黄ばみ)」が起こりやすく、見た目の美しさは数年で低下してしまいます。さらに、固まる際にわずかに収縮する性質があるため、歯と詰め物の間に微細な隙間ができやすく、そこから再びむし歯になる(二次カリエス)リスクもあります。

【治療期間の目安】 1日(即日完了)。所要時間は30分〜1時間程度です。

2. 【メタル(銀歯)】保険適用の定番。安くて丈夫だが抱えるリスクとは

次にご紹介するのは、いわゆる「銀歯」です。正式には「金銀パラジウム合金」という金属で作られた、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)のことを指します。日本の保険診療において、長年スタンダードとされてきた治療法です。

【メリット】 最大のメリットは、やはり「保険適用による費用の安さ」です。経済的な負担を最小限に抑えつつ、噛む機能を回復させることができます。また、金属であるため「強度」が非常に高く、強く噛み締める奥歯に使用しても、素材自体が割れたり欠けたりすることはまずありません。薄く伸ばしても強度が保てるため、歯を削る量をある程度抑えることも可能です。

【デメリット】 多くの患者様が気にされるのが、「見た目の悪さ」です。お口を開けた時に銀色がギラリと目立つことは、大きなコンプレックスとなり、「人前で思い切り笑えない」といった精神的なデメリットに繋がります。 しかし、歯科衛生士としてより懸念するのは、「むし歯の再発(二次カリエス)リスクの高さ」と「金属アレルギー」です。銀歯は、セメントで歯に接着しますが、長年使用しているとセメントが唾液で溶け出し、さらに金属が温度変化で膨張・収縮を繰り返すことで、歯との間に隙間が生まれやすくなります。そこから細菌が侵入し、銀歯の下でむし歯が進行してしまうケースが非常に多いのです。また、お口の中で金属イオンが溶け出し、体内に蓄積されることで、突然アレルギーを発症したり、歯茎が黒ずんだり(メタルタトゥー)する原因にもなります。

【治療期間の目安】 型取りから装着まで、最低2回の通院が必要です。期間は1週間〜2週間程度です。

3. 【ゴールド(金歯)】見た目は目立つが、歯科医が自分の口に入れたいNo.1

「金歯」と聞くと、成金のようなイメージを持たれるかもしれませんが、実は歯科医療の専門家の間では、「機能性において、ゴールドに勝る素材はない」と言われるほど、極めて優れた補綴物です。これは自費診療(保険適用外)となります。

【メリット】 ゴールド(高カラット金合金)の最大の特徴は、「展延性(てんえんせい)」と呼ばれる、しなやかに伸びる性質です。この性質のおかげで、噛めば噛むほど金が伸びて歯に馴染み、歯との隙間(ギャップ)が限りなくゼロに近づきます。 隙間がないということは、細菌が侵入できないということであり、「むし歯の再発リスクが極めて低い」素材と言えます。 また、金は硬すぎず柔らかすぎない、天然の歯に非常に近い硬さを持っています。そのため、噛み合う向かい側の歯(対合歯)を傷つけることがありません。さらに、生体親和性が高く、金属アレルギーの原因になりにくい上、腐食(錆び)することもありません。耐久性、適合性、生体への優しさ、どれをとっても最高峰の素材です。

【デメリット】 機能的には完璧に近いゴールドですが、唯一にして最大の欠点が「見た目」です。金色であるため、どうしても目立ちます。特に下の歯に入れた場合、会話の際に見えてしまうことがあります。また、金相場の高騰により、「治療費が高額」になりやすいという経済的なデメリットもあります。

【治療期間の目安】 型取りから装着まで、2回〜3回の通院。期間は2週間程度です。

4. 【セラミック】圧倒的な美しさと清潔さ。むし歯再発を防ぐ最良の選択

「セラミック」は、お茶碗などの陶器と同じ素材で作られた詰め物・被せ物です。一般的に「e.max(イーマックス)」などのガラスセラミックや、ポーセレンなどがこれに当たります。自費診療となりますが、近年の審美歯科治療において最も人気のある素材です。

【メリット】 セラミックの最大のメリットは、「圧倒的な美しさ(審美性)」です。天然の歯が持つ透明感や色調、ツヤを忠実に再現できるため、治療したことが誰にも分からないほど自然に仕上がります。また、お皿などの陶器が汚れを落としやすいのと同じで、セラミックの表面はツルツルしており、「プラーク(歯垢)などの汚れが付きにくい」という特徴があります。これにより、歯周病の予防にも効果的です。 さらに、セラミックは歯と化学的に強固に接着するため、歯と一体化して隙間ができにくく、むし歯の再発リスクが低いのも大きな魅力です。金属を一切使用しない「メタルフリー」治療なので、金属アレルギーの心配もゼロです。変色もしないため、長期間美しい状態を保てます。

【デメリット】 デメリットは、「衝撃に弱い」ことです。陶器であるため、極端に硬いものを噛んだり、強い歯ぎしり・食いしばりの癖があったりすると、割れたり欠けたりする(破折)リスクがあります。また、自費診療であるため、保険治療に比べて「費用が高額」になります。

【治療期間の目安】 型取りから装着まで、2回〜3回の通院。期間は2週間〜3週間程度です。

5. 【ジルコニア】人工ダイヤモンドの強度!割れにくい白い歯の新常識

最後にご紹介するのは、ここ数年で急速に普及している「ジルコニア」です。これもセラミックの一種ですが、「人工ダイヤモンド」としても知られるほど、非常に高い強度を持つ素材です。自費診療となります。

【メリット】 ジルコニアの最大の特徴は、「金属に匹敵する強度と耐久性」です。従来のセラミックの弱点であった「割れやすい」という問題を克服しており、噛む力が非常に強い奥歯や、複数本の歯を繋ぐ「ブリッジ」にも安心して使用できます。 色は白く、金属のように目立つことはありません。また、生体親和性が非常に高く、人工関節などにも使われるほど体に安全な素材であり、金属アレルギーの心配もありません。プラークが付きにくく清潔に保ちやすい点は、他のセラミックと同様です。

【デメリット】 非常に硬い素材であるため、研磨や調整が不十分だと、噛み合う向かい側の天然歯をすり減らしてしまう可能性があります(現在は材料の改良が進み、天然歯に優しいタイプも増えています)。 また、審美面では、従来のセラミック(ガラスセラミックなど)に比べると、透明感がやや劣る傾向があります。前歯に使用する場合、ジルコニアの表面にセラミックを焼き付ける加工をして美しさを高めることもありますが、その分費用がかかります。費用面では、やはり「高額」になることがデメリットです。

【治療期間の目安】 型取りから装着まで、2回〜3回の通院。期間は2週間〜3週間程度です。

6. まとめ

5つの補綴物(詰め物・被せ物)について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

  1. レジン(保険):安くて白いが、強度が低く変色しやすい。小さなむし歯向き。
  2. メタル/銀歯(保険):安くて丈夫だが、見た目が悪く、むし歯再発やアレルギーのリスクが高い。
  3. ゴールド(自費):見た目は目立つが、適合性と耐久性はNo.1。歯を守るなら最高の素材。
  4. セラミック(自費):最も美しく、汚れが付きにくい。割れるリスクはあるが、審美重視の方へ。
  5. ジルコニア(自費):白くてとにかく丈夫。奥歯や歯ぎしりがある方でも安心。

「どれが一番良いか」は、患者様のお口の状態(噛み合わせ、むし歯の大きさ、場所)や、何を優先したいか(見た目、費用、長持ち)によって異なります。

「とりあえず保険で」と安易に決めてしまい、数年後にむし歯が再発して再治療…となっては、結果的に歯を削る量が増え、歯の寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。初期費用はかかっても、再治療のリスクが少ない素材を選ぶことが、長い目で見れば、ご自身の歯を守り、経済的にもメリットがある場合も多いのです。

私たち、ひがし歯科医院では、患者様一人ひとりのお口の状態をしっかりと診断し、それぞれの素材のメリット・デメリットを分かりやすくご説明した上で、患者様ご自身が納得できる最善の選択をサポートさせていただきます。分からないことやご不安な点は、カウンセリング時に、どうぞ遠慮なくご相談ください。