補綴治療における素材選び:メタル、セラミック、ジルコニアのメリットとデメリット
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こんにちは。熊本県上益城郡の歯医者、ひがし歯科医院の歯科衛生士大野です。
今日は補綴についてお話ししようと思います。
そもそも補綴(ほてつ)とは…?
むし歯の治療後、虫歯が小さければ歯科用のレジンを詰めるなどして終わりますが、ある程度の大きさになると補綴、いわゆる「被せ物」が入ります。
補綴治療とはむし歯や外傷で失われた歯の機能と見た目を回復するために行われますが、使用する素材には多くの選択肢があります。
特にメタル、セラミック、ジルコニアは、それぞれ特有の特性を持ち、多くの患者さんに選ばれている一般的な素材です。
それぞれのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
目次
1. メタル補綴の特徴と評価
2. セラミック補綴の特性と選定理由
3. ジルコニア補綴の利点と利用シーン
4. 補綴素材選びの重要点と費用対効果
5. 補綴治療を選ぶ際の注意点と健康への影響
6. まとめ
1. メタル補綴の特徴と評価
メタル補綴は、歴史的に長い使用実績を持つ方法で、さまざまな金属合金が使用されています。金や銀、パラジウム、ニッケルクロム合金などが一般的で、それぞれが異なる物理的特性を備えています。
今回は保険治療で多く使われている銀合金のメタル補綴についてお話しさせてもらいます。
まずメリットは保険適応なので価格が安価ということです。(保険3割負担で約6〜7千円)
デメリットとしては、
①見た目の悪さ。奥歯の場合銀色の被せ物となるため目立ちます。前歯の場合は硬質レジン前装冠といってベースは金属で見える部分はレジン(樹脂)で覆ってありますが、材質がレジンのため年月とともに黄ばんでくるのが特徴です。金属を使用しているのでメタルタトゥーといって歯茎が黒ずんでくる場合もあります。
②金属アレルギーのリスク
金属を用いているためアレルギーを引き起こすリスクがあります。
③耐用年数が短い
残念ながら、日本の保険で使われているメタル補綴は良い素材とは言えません。
ゴールドがほとんど含まれないため劣化も早く、平均耐用年数はジルコニア等に比べると短いです。
メタルと歯の隙間が柔らかくなるため脱離、二次カリエスなどになりやすいのです。
メタル補綴が外れたらまたやり変えれば大丈夫、と安易に思ってはいけません。
再治療を行う場合、やわらかくなった歯質を削る必要があります。そのため、治療を繰り返せば歯質はどんどん失われ、最終的には再治療が困難となり抜歯という可能性もあります。
費用面では、メタル補綴は比較的経済的で、保険適用が可能な場合もあるため、費用を抑えたい方には魅力的です。しかし、健康面でのリスクや審美性への影響を考慮して、他の素材との比較をおすすめします。
2. セラミック補綴の特性と選定理由
メリット①審美性が高い
セラミック補綴は審美性に優れていることで知られ、天然の歯に非常に近い見た目を再現できます。さらに、その安定した化学特性により口腔内での色素沈着や変色もほとんど起こりません。
②アレルギーのリスクがない
セラミックは金属を一切含まないため、アレルギーの心配がありません。
③保険の金属補綴と比べて耐用年数が長い
セラミックは保険の金属補綴と比べ歯質が柔らかくなりにくいため耐用年数が長くなります。
デメリット①治療費が高価
保険適応外となるため価格は高価になります。金額は歯科医院によって様々ですが、なるべく価格設定を抑えている当院でもインレー4.4万(税込)、冠6.6万(税込)となっています。
(2024.12月現在)
②制作に日数がかかる
制作に高度な技術が求められるため、治療期間が長くなることもあります。
メタル補綴の場合制作期間は1週間ほどですが、セラミックの場合2週間ほどかかります。
③破損の可能性
セラミック補綴は非常に硬く、日常的な使用に耐えられる反面、硬いものを強く噛んだ際に割れる可能性もあります。そのようなトラブルを避けるため、当院では歯軋り•くいしばりがある方や、大臼歯とよばれるより力がかかる歯には後述するジルコニアをお勧めしています。
3. ジルコニア補綴の利点と利用シーン
メリット①審美性が高い
ジルコニアもセラミック同様白い素材で、審美性に優れ、自然な外観を持っています。しかし、セラミックと比べるとやや透明感(本物の歯のようなリアルな艶感)が劣るため、主に大臼歯のような奥歯に使用されます。
②アレルギーのリスクがない
ジルコニア補綴は、セラミック製と同様にアレルギーのリスクがほとんどないため、金属アレルギーに心配がある方にも推奨される素材です。
③ 保険の金属補綴と比べて耐用年数が長い
セラミック同様、ジルコニアは保険の金属補綴と比べ歯質が柔らかくなりにくいため耐用年数が長くなります。
④強度が高い
破損しにくさにおいて非常に高い信頼性を誇ります。硬度と強度に優れているため、特に臼歯での使用に向いており、負荷のかかる咀嚼動作にも適しています。
デメリット①治療費が高価
保険適応外となるため価格は高価になります。金額は歯科医院によって様々ですが、なるべく価格設定を抑えている当院でも、臼歯の冠で6.6万〜7.7万(税込)前歯で8.8万(税込)となっています。
(2024.12月現在)
②制作に日数がかかる
制作に高度な技術が求められるため、治療期間が長くなることもあります。
メタル補綴の場合制作期間は1週間ほどですが、ジルコニアの場合2〜3週間ほどかかります。
4. 補綴素材選びの重要点と費用対効果
補綴素材を選ぶ際には、それぞれのメリットとデメリットをしっかりと理解し、ライフスタイルや健康状態、予算に応じて最適な選択をすることが大切です。審美性を重視する方にはセラミックやジルコニアが適していますが、費用を考慮してメタルを選ぶ場合もあります。
また、長期的な視点で見ると、素材の耐用年数やメンテナンスの必要性も評価すべきポイントです。ジルコニアやセラミックは高価ですが、長い目で見たコストパフォーマンスが優れています。
5. 補綴治療を選ぶ際の注意点と健康への影響
補綴治療の選択には、短期的なコストや審美性だけでなく、長期的な健康影響も考慮に入れることが大切です。例えば、金属アレルギーを持っている場合には、非金属のセラミックやジルコニアを選ぶことで健康リスクを回避できます。アレルギー以外でも、材質の硬さが歯列全体に与える影響や、噛み合わせへの影響も考慮すべきです。
生活習慣によって選択が左右されることもあります。例えば、口腔内を常に清潔に保つことが困難な場合には、色素沈着の少ないセラミックやジルコニアが望ましいかもしれません。また、スポーツやハードな活動をする方には、耐衝撃性に優れたジルコニアが適している場合もあります。
患者さんご自身が情報を収集し、自分のニーズに合った選択をすることも重要です。歯科医師と充分にコミュニケーションを取り、正しい情報を入手し、最適な選択をすることで、より健康的な口腔環境を維持することができます。
まとめ
補綴治療における素材選びは、患者さんにとって大きな決断の一部です。それぞれの素材が持つ特性を理解し、利点と欠点を慎重に比較することが求められます。メタル、セラミック、ジルコニアの中から、自分のニーズや健康状態に合った素材を選ぶことが、成功する補綴治療の鍵となるでしょう。しっかりとした情報のもと、真に満足できる治療を受けていただければと思います。
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