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虫歯予防は歯磨きだけじゃない!歯科衛生士が教える知っておいてほしい5つの「食生活」

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こんにちは。熊本県上益城郡の歯医者、ひがし歯科医院の歯科衛生士 大野です。私たちは、患者様の虫歯予防のために、毎日の丁寧な歯磨き(セルフケア)や、歯科医院での定期的なクリーニング(プロフェッショナルケア)、フッ素塗布の重要性を、日々の診療でお伝えしています。しかし、「歯磨きは毎日頑張っているはずなのに、なぜか虫歯になりやすい…」と悩んでいらっしゃる方が、実は少なくありません。その原因、もしかしたら毎日の「食生活」に隠されているかもしれません。

「甘いものを食べなければ大丈夫なんでしょう?」 「お茶なら、いつ飲んでも平気?」 「虫歯になりにくい食べ物ってあるの?」

虫歯予防というと、どうしても「歯磨き」という“守り”の側面にばかり目が行きがちですが、実は、「何を、どのように食べるか」という“攻め”の要因、すなわち食生活のコントロールも、同じくらい、いえ、それ以上に重要なのです。どんなに強力なディフェンス(歯磨き)も、それを上回る攻撃(虫歯になりやすい食生活)にさらされ続ければ、いつかは破綻してしまいます。今回は、歯科衛生士の視点から、あなたの歯を虫歯から守るための、食生活に関する具体的なアドバイス、「5つの黄金ルール」をご紹介していきます。

目次

  1. 虫歯はどうやってできる?「砂糖」と「酸」と「時間」の危険な関係
  2. ルール①:最大の敵は「砂糖」!甘いものとの賢い付き合い方
  3. ルール②:「だらだら食べ」は絶対NG!食事と間食の時間を決める
  4. ルール③:「酸」にも注意!歯を溶かす「酸蝕歯(さんしょくし)」というもう一つの脅威
  5. ルール④:あなたの歯を強くする!積極的に摂りたい「味方」の食材
  6. まとめ

1. 虫歯はどうやってできる?「砂糖」と「酸」と「時間」の危険な関係

まず、虫歯予防の食事アドバイスを理解していただくために、虫歯ができるメカニズムを簡単におさらいしましょう。虫歯は、以下の4つの要因が重なった時に発生します。

  1. 歯の質(歯の強さ、唾液の力など)
  2. 虫歯菌(ミュータンス菌など)
  3. 食べ物(特に糖分)
  4. 時間(食べ物が口の中に留まる時間)

この中で、私たちが日常的にコントロールできるのが、「食べ物」と「時間」です。虫歯菌は、私たちが食べたものに含まれる「砂糖(ショ糖など)」をエサにして、強力な「酸」を作り出します。この「酸」が、歯の表面の硬いエナメル質を溶かし始めること(これを「脱灰(だっかい)」と言います)、これが虫歯の始まりです。

もちろん、私たちの体にも防御システムがあります。それが「唾液」です。唾液は、酸性に傾いたお口の中を中性に戻し(緩衝能)、溶けかけた歯の表面に、唾液中のカルシウムやリンを補給して修復する(再石灰化)という、素晴らしい働きを持っています。

しかし、もし「砂糖」を頻繁に摂取したり、「時間」を決めずにダラダラと食べ続けたりすると、どうなるでしょうか。お口の中は常に酸性の状態が続き、唾液による修復(再石灰化)が、酸による破壊(脱灰)に追いつかなくなってしまいます。このバランスが崩れた時に、歯に穴が開き、虫歯となってしまうのです。つまり、虫歯予防のための食事とは、「酸が作られる原因(砂糖)を減らす」ことと、「唾液が歯を修復する時間(再石灰化の時間)を十分に確保する」こと、この二つに尽きるのです。

2. ルール①:最大の敵は「砂糖」!甘いものとの賢い付き合い方

虫歯予防の食生活、最初の、そして最も重要なルールは、「砂糖(ショ糖)の摂取をコントロールすること」です。虫歯菌にとって、砂糖は最強のエネルギー源であり、最も効率よく強力な酸を作り出すための“ガソリン”です。「甘いものを一切食べるな」というのは、現実的ではありませんし、ストレスにもなってしまいます。大切なのは、「種類」「量」「頻度」を意識した、賢い付き合い方です。

  • 砂糖の種類に注目する
    • 避けるべき砂糖:虫歯菌が最も好むのは「ショ糖(砂糖)」です。チョコレート、クッキー、ケーキ、ジュース、菓子パン、アイスクリーム、飴など、いわゆる「お菓子」や「甘い飲み物」に大量に含まれています。
    • 代わりになる甘味料:虫歯菌がエサとして利用できない、あるいは利用しにくい「代用甘味料」を選ぶのも一つの手です。代表的なものに「キシリトール」があります。キシリトールは、虫歯菌の活動を弱める効果も報告されており、キシリトール100%のガムやタブレットは、虫歯予防の強い味方となります。ただし、「キシリトール配合」と書かれていても、砂糖も一緒に含まれていては意味がありませんので、成分表示をよく確認しましょう。
  • 量と頻度を管理する: もちろん、摂取する砂糖の「総量」を減らすに越したことはありません。しかし、それ以上に重要なのが、次のルールにも繋がる「摂取頻度」です。同じ量のチョコレートでも、一度に全部食べてしまうのと、一日かけて少しずつ食べるのとでは、後者の方が、お口の中が酸性になっている時間が圧倒的に長くなり、虫歯のリスクは何倍にも跳ね上がります。甘いものを食べる時は、量を決めて、一気に食べるようにしましょう。
  • 隠れた砂糖に注意: 「甘くないから大丈夫」と油断しがちな食品にも、注意が必要です。例えば、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、栄養ドリンク、缶コーヒー(微糖も含む)、さらには、みりんやケチャップなどの調味料、ドレッシングにも、想像以上の砂糖が含まれています。これらの飲料を水代わりに飲む習慣は、非常に危険です。

3. ルール②:「だらだら食べ」は絶対NG!食事と間食の時間を決める

虫歯予防の食生活、二つ目の黄金ルールは、「だらだら食べ・だらだら飲みを、絶対にやめること」です。これは、砂糖の摂取頻度と密接に関係しており、虫歯リスクを決定づける最も重要な生活習慣と言えます。

ルール①で説明したように、食事をすると、お口の中は酸性になり、歯が溶け始めます(脱灰)。その後、唾液の力によって、30分~1時間ほどかけて、お口の中は中性に戻り、歯の修復(再石灰化)が始まります。これが、健康なお口のサイクルです。

しかし、もし、食事と食事の間に、アメをなめたり、ジュースを飲んだり、お菓子をつまんだりする「だらだら食べ」を続けていたら、どうなるでしょうか。せっかく唾液が頑張って中性に戻そうとしている最中に、再び糖分が供給され、お口の中は酸性の状態が1日中続いてしまいます。 唾液が歯を修復する「再石灰化の時間」が、全く確保できないのです。これでは、どんなに歯磨きを頑張っても、歯が溶け続ける一方になってしまいます。

このリスクを防ぐために、「食事と間食の時間を、きちんと決める」ことが絶対に必要です。

  • 食事は、朝・昼・晩の3回を基本とする。
  • 間食(おやつ)は、時間を決めて、1日1回(多くても2回)まで。
  • 食事と食事の間は、最低でも2~3時間は空ける。
  • その間に口にして良いのは、「水」か「お茶(無糖)」だけにする。

特に、デスクワーク中に、甘いコーヒーやジュースを、少しずつ時間をかけて飲む習慣(ちびちび飲み)がある方は、非常に危険です。飲み物を水やお茶(無糖)に変えるだけでも、虫歯のリスクは劇的に下がります。お子様のおやつの時間も、「決まった時間に、決まった量だけ」を徹底し、食べた後は歯を磨くか、最低でも水やお茶を飲ませる習慣をつけることが大切です。

4. ルール③:「酸」にも注意!歯を溶かす「酸蝕歯(さんしょくし)」というもう一つの脅威

これまでは、虫歯菌が作り出す「酸」の話をしてきました。しかし、近年、もう一つの「酸」による歯のトラブルが、非常に増えています。それが、**食べ物や飲み物に含まれる「酸」そのものが、歯のエナメル質を直接溶かしてしまう「酸蝕歯(さんしょくし)」**です。

虫歯は、細菌が原因の「感染症」ですが、酸蝕歯は、酸性の飲食物による「化学的な溶解」です。虫歯菌がいない、清潔なお口でも起こり得るのが特徴です。歯が溶けると、歯がしみやすくなったり(知覚過敏)、歯の先端が透けて見えたり、表面のツヤがなくなったりします。

  • 酸性の強い飲食物の例
    • 飲料:炭酸飲料(コーラ、サイダー、糖分ゼロのものも含む)、柑橘系のジュース(オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ワイン(特に白)
    • 食品:お酢(黒酢ドリンク、酢の物など)、柑橘類(レモン、みかんなど)、ドレッシング、梅干し

これらの飲食物が悪いわけではありません。問題なのは、これらも「だらだら食べ・だらだら飲み」をしてしまうことです。お酢ドリンクやスポーツドリンクを、「健康のため」と思って水代わりに飲む習慣は、歯にとっては非常に危険な行為です。

  • 酸蝕歯を防ぐための工夫
    • 酸性のものを口にしたら、すぐに水で口をゆすぐ。
    • 炭酸飲料などは、ストローを使って、歯の表面に触れる時間を短くする。
    • 就寝前に、これらの飲食物を摂取するのは避ける。(就寝中は唾液の分泌が減るため、酸の影響を非常に受けやすくなります)

虫歯予防と合わせて、この「酸」そのものへの意識も持つことが、現代の食生活においては非常に重要になっています。

5. ルール④:あなたの歯を強くする!積極的に摂りたい「味方」の食材

虫歯予防は、敵(砂糖や酸)を減らすことだけではありません。ご自身の歯を強くし、守備力を高める「味方」の食材を、日々の食事に賢く取り入れることも大切です。

  • 歯の「再石灰化」を助ける食材 歯の主成分である、カルシウムリンを豊富に含む食品は、歯の修復(再石灰化)を助けてくれます。
    • :牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、小魚、海藻類、大豆製品、野菜類など。 特に、チーズやヨーグルト(無糖)は、お口の中をアルカリ性に傾け、酸を中和する働きも期待できるため、おやつや食事の最後に少し摂るのもお勧めです。
  • よく「噛む」ことが必要な食材 これが、歯科衛生士として、特に意識していただきたいポイントです。「噛む」という行為は、虫歯予防の最強の味方である「唾液」の分泌を、強力に促進します。
    • 食物繊維の多い野菜(ごぼう、れんこん、セロリ、きのこ類など)、海藻類、ナッツ類(間食として適量)
    • 食事の際は、まず、このような歯ごたえのある野菜などから食べ始める「ベジファースト」ならぬ「カミカミファースト」を意識すると、自然と咀嚼回数が増え、唾液の分泌が促されます。また、よく噛むことで、歯の表面の汚れを洗い流す「自浄作用」も高まります。
  • 歯の質を強くする栄養素 歯や骨の形成に関わる、タンパク質ビタミンA(緑黄色野菜など)、ビタミンC(野菜・果物)、ビタミンD(魚類・きのこ類など)も、バランスよく摂取することが、長期的な歯の健康には不可欠です。

特定の食品だけを食べるのではなく、様々な食材を、よく噛んで、バランス良く食べることが、結果として、歯を内側からも外側からも強くすることに繋がるのです。

6. まとめ

虫歯予防のための食生活、その「5つの黄金ルール」(最後の2つを1つにまとめました)について、ご理解いただけましたでしょうか。最後に大切なポイントをもう一度おさらいします。

  1. 虫歯は「砂糖」をエサに「酸」が作られ、「時間」をかけて歯が溶ける病気。
  2. ルール①:最大の敵「砂糖」を減らす。 特にジュースや菓子パン、アメなどに注意。
  3. ルール②:「だらだら食べ・飲み」をやめる。 食事と間食の時間を決め、お口が休む(再石灰化する)時間を必ず作る。
  4. ルール③:「酸そのもの」にも注意。 炭酸飲料やお酢ドリンクなどの「酸蝕歯」リスクも知る。
  5. ルール④:「歯の味方」を積極的に摂る。 よく噛むこと(唾液を出す)と、カルシウムなどの栄養バランスを意識する。

歯磨きを1日3回、5分ずつ頑張ったとしても、合計15分です。残りの23時間45分を、どのような食生活で過ごすのか。その時間が、あなたの歯の運命を握っていると言っても過言ではありません。

「あれもダメ、これもダメ」と、食の楽しみを全て我慢する必要はありません。「メリハリをつける」こと、そして「だらだら続けない」こと。まずは、この二つを意識するだけでも、あなたのお口の虫歯リスクは、必ず変わってきます。

私たち、ひがし歯科医院では、患者様一人ひとりの食生活やライフスタイルにも耳を傾け、無理なく続けられる、あなたに合った虫歯予防のアドバイスをさせていただいています。毎日のセルフケアと食生活の改善、そして、私たちのプロフェッショナルケアで、一緒に「虫歯ゼロ」の健康なお口を目指していきましょう。