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矯正の主役「ブラケット」ってどんな装置?種類・役割・注意点を解説

  • 矯正歯科

こんにちは。熊本県上益城郡の歯医者、ひがし歯科医院の歯科衛生士 大野です。歯列矯正と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは、歯の表面についた、一つひとつの小さな装置ではないでしょうか。この装置こそが、ワイヤー矯正治療の「エンジン」ともいえる、最も重要なパーツ、「ブラケット」です。

「ブラケットって、銀色の目立つやつでしょう?」 「どんな仕組みで歯を動かしているの?」 「お手入れは大変じゃない?」

矯正治療を始められる患者様からは、このブラケットに関する様々なご質問をいただきます。矯正治療の長い期間、ずっとお口の中で共に過ごす大切なパートナーだからこそ、その役割や種類、付き合い方を正しく知っていただくことが、治療をスムーズに進めるための第一歩となります。今回は、そんな矯正治療の主役であるブラケットについて、歯科衛生士の視点から、その基本を分かりやすく解説していきます。

目次

  • そもそも「ブラケット」とは?ワイヤー矯正の仕組みと役割
  • 見た目だけじゃない!ブラケットの主な種類とそれぞれの特徴
  • ブラケット装着中の食事で気をつけるべきこと
  • むし歯を防ぐ!ブラケット周りの正しい歯磨き方法
  • もしブラケットが外れてしまったら?慌てないための対処法
  • まとめ

1. そもそも「ブラケット」とは?ワイヤー矯正の仕組みと役割

ブラケットとは、ワイヤー矯正を行う際に、専用の接着剤で一つひとつの歯の表面に直接取り付ける、小さな装置のことです。このブラケットには、ワイヤーを通すための溝(スロット)が彫られています。

ワイヤー矯正は、このブラケットの溝に通したワイヤーが、元のまっすぐな形に戻ろうとする力を利用して歯を動かしていきます。ブラケットは、その**ワイヤーの力を、正確に、そして効率的に歯に伝えるための「土台」**としての、非常に重要な役割を担っているのです。

どんなに高性能なワイヤーを使っても、このブラケットが正しい位置に、しっかりと歯に接着されていなければ、計画通りに歯を動かすことはできません。一つひとつの小さなブラケットは、まさに歯を理想的な位置へと導くための、精密なコントロールタワーなのです。

2. 見た目だけじゃない!ブラケットの主な種類とそれぞれの特徴

一言でブラケットと言っても、素材や構造によっていくつかの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

  • メタルブラケット(金属製)
  • 特徴:昔からある、最もスタンダードな銀色のブラケットです。
  • メリット:金属製のため非常に丈夫で、壊れにくいのが特徴です。また、ワイヤーとの摩擦が少ないため、歯がスムーズに動きやすく、治療効率が良いとされています。他のブラケットに比べて、比較的費用を抑えられるのも大きな利点です。
  • デメリット:やはり、金属色が目立ちやすいという審美面でのデメリットがあります。
  • セラミックブラケット(陶器製)
  • 特徴:歯の色に近い、白や透明感のあるセラミックで作られたブラケットです。
  • メリット:歯の色に馴染むため、メタルブラケットに比べて圧倒的に目立ちにくく、審美性に優れています。金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配もありません。
  • デメリット:メタルに比べると、素材の強度でやや劣り、強い衝撃で欠けてしまう可能性があります。また、治療費はメタルブラケットよりも高価になります。
  • プラスチックブラケット(樹脂製)
  • 特徴:セラミック同様、歯の色に近い白色のブラケットです。
  • メリット:セラミックブラケットよりも、さらに費用を抑えられる場合があります。
  • デメリット:長期間の使用で、カレーやコーヒーなどの色の濃い飲食物によって、着色しやすいという欠点があります。また、強度も他の素材に比べて弱いため、近年ではセラミックブラケットが主流になっています。

3. ブラケット装着中の食事で気をつけるべきこと

ブラケットを装着している期間は、装置の破損や脱落を防ぐために、食事に少しだけ工夫が必要です。特に、以下のような食べ物は避けるようにしましょう。

  • 硬いもの:お煎餅、ナッツ、氷、硬いお肉の塊など。ブラケットが欠けたり、外れたりする直接的な原因になります。
  • 粘着性のもの(くっつきやすいもの):お餅、キャラメル、ガムなど。装置に絡みつき、取り除くのが非常に困難です。むし歯のリスクも高めます。
  • 繊維性のもの:ほうれん草やえのきなどの葉物野菜。細かく繊維が装置に絡まりやすいです。
  • かぶりつくもの:リンゴやトウモロコシ、骨付き肉など。前歯でかぶりつくと、ブラケットに強い力がかかってしまいます。小さく切ってから、奥歯で食べるように工夫しましょう。

少し不便に感じられるかもしれませんが、この少しの注意が、治療をスムーズに進めるための大切なポイントです。

4. むし歯を防ぐ!ブラケット周りの正しい歯磨き方法

歯科衛生士として、最もお伝えしたいのがこのお話です。ブラケットの周りは、非常に複雑な形をしており、食べカスや歯垢(プラーク)が溜まりやすい、むし歯のハイリスクゾーンとなります。

矯正治療中にむし歯ができてしまうと、そちらの治療を優先するために、矯正を一時中断せざるを得ない場合もあります。そうならないために、毎日の丁寧な歯磨きが何よりも重要です。

  • 歯ブラシの基本:ブラケットの上下、左右、様々な角度から歯ブラシの毛先を当て、一つひとつのブラケットの周りを、小刻みに優しく磨きましょう。
  • タフトブラシ(ワンタフトブラシ)の活用:毛先が小さく、山形にカットされた仕上げ磨き用の歯ブラシです。ブラケットの周りや、ワイヤーの下など、通常の歯ブラシでは届きにくい場所をピンポイントで磨くのに、非常に効果的です。
  • 歯間ブラシ・フロスの使用:ワイヤーが通っているため、通常のフロスは使いにくいですが、矯正用のフロスや、歯間ブラシを使って、歯と歯の間の清掃も必ず行いましょう。

最初は難しく感じるかもしれませんが、毎日の習慣になれば、必ず上手に磨けるようになります。私たち歯科衛生士が、あなたに合った最適な清掃方法を、責任を持って指導させていただきますので、ご安心ください。

5. もしブラケットが外れてしまったら?慌てないための対処法

気をつけていても、硬いものを噛んでしまったり、不意な衝撃でブラケットが外れてしまうことは、残念ながら起こり得ます。もし外れてしまっても、決して慌てないでください。

まずは、外れたブラケットをなくさないように、ティッシュなどに包んで保管してください。そして、できるだけ早く、当院にご連絡いただき、指示を仰いでください。

外れたままで長期間放置すると、その部分だけ歯が計画通りに動かず、治療期間が延びてしまう原因になります。痛みなどがなくても、自己判断で放置せず、必ず受診するようにしましょう。

6. まとめ

矯正治療の主役である「ブラケット」。その役割と、上手な付き合い方について、ご理解いただけましたでしょうか。

  • ブラケットは、ワイヤーの力を歯に伝えるための、重要な土台である。
  • 目立ちにくいセラミック製など、審美性に配慮した種類も選べる。
  • 治療中は、硬いものや粘着性の食べ物は、装置の破損を防ぐために避ける。
  • タフトブラシなどを活用し、ブラケット周りを清潔に保つことが、むし歯予防の鍵。
  • もし外れてしまっても、慌てず歯科医院に連絡する。

矯正治療という長い旅路を、最後まで快適に、そして成功裏に終えるためには、このブラケットというパートナーと、上手に付き合っていくことが不可欠です。あなたの矯正ライフが少しでも快適なものになるよう、全力でサポートさせていただきますので、矯正を検討している方はぜひ、ひがし歯科にご相談ください。

そして今回紹介したブラケット矯正の他にもうひとつ、「マウスピース矯正」というものがあります。次回はそのマウスピース矯正について紹介したいと思います。それではまた次回!

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