「マウスピース矯正」で理想の歯並びへ。後悔しないために知っておいてほしいこと
- 矯正歯科
こんにちは。熊本県上益城郡の歯医者、ひがし歯科医院の歯科衛生士 大野です。近年、歯列矯正の世界で、まさに主役ともいえるほどの人気を集めているのが「マウスピース矯正」です。当院でも、「マウスピースで矯正ができると聞いたのですが…」というお問い合わせを、年代を問わず、非常に多くいただきます。
「透明で目立たない」「取り外せるから楽そう」といった、そのスマートなイメージから、多くの方が興味を持たれていますが、その一方で、「本当に歯が動くの?」「誰でもできるの?」「自己管理が大変って本当?」といった、たくさんの疑問や不安の声が聞かれるのも事実です。
マウスピース矯正は、非常に優れた治療法ですが、その特性を正しく理解しないまま始めてしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔に繋がってしまう可能性もゼロではありません。今回は、歯科衛生士の視点から、マウスピース矯正のメリット・デメリット、そして治療を成功させるための重要なポイントまで、皆さんが本当に知りたい情報を、正直にお話ししていきます。

目次
- そもそも「マウスピース矯正」とは?歯が動く仕組み
- なぜ人気?マウスピース矯正の5つの大きなメリット
- 始める前に知っておくべき、マウスピース矯正の4つのデメリット
- マウスピース矯正、成功の鍵は「あなた自身」にあります
- 治療中のパートナー。マウスピースの正しいお手入れ方法
- まとめ
1. そもそも「マウスピース矯正」とは?歯が動く仕組み
マウスピース矯正とは、その名の通り、患者様一人ひとりの歯の形に合わせて作製された、透明なマウスピース型の装置(「アライナー」と呼びます)を装着し、段階的に歯を動かしていく治療法です。
治療を始める前に、精密な歯型採り(当院では光学スキャナーを使用します)とレントゲン撮影を行い、そのデータを基に、治療完了までの歯の動きを、コンピューター上で3Dシミュレーションします。この治療計画に基づいて、ゴールまでの過程を細分化した、数十枚のアライナーが一度に作製されます。
患者様には、このアライナーを1~2週間ごとに、ご自身で次のステージのものに交換していただきます。一枚のアライナーで歯が動く量は、わずか0.25mm程度。この、目には見えないほどのわずかな移動を、何十枚ものアライナーを重ねていくことで、最終的に理想の歯並びへと導いていくのです。
2. なぜ人気?マウスピース矯正の5つの大きなメリット
マウスピース矯正が、これほどまでに多くの方に選ばれるのには、従来のワイヤー矯正にはない、魅力的なメリットがあるからです。
- 圧倒的に目立たない(審美性) 最大のメリットは、やはりこれでしょう。透明な薄いプラスチック製のため、装着していても、日常生活で他人に気づかれることはほとんどありません。接客業の方や、見た目を特に気にされる方にとって、これは何物にも代えがたい利点です。
- 食事をこれまで通り楽しめる アライナーは、お食事の際にはご自身で取り外します。そのため、ワイヤー矯正のように、硬いものや粘着性のあるものを避ける必要がありません。食べたいものを、これまで通り、気にせず楽しめるのは、日々の生活の質(QOL)を大きく向上させます。
- 歯磨きがしやすく、衛生的 食事と同様、歯磨きの際もアライナーを取り外します。装置がついていない状態で、普段通りに歯ブラシやフロスを使えるため、お口の中を隅々まで清潔に保つことができ、矯正中のむし歯や歯周病のリスクを低減させることができます。
- 痛みや違和感が比較的少ない 一枚のアライナーで歯を動かす力が、ワイヤー矯正の調整時に比べてマイルドなため、痛みの感じ方が比較的少ないと言われています。また、装置が粘膜に当たって口内炎ができる、といったトラブルもほとんどありません。
- 通院頻度が少ない 数枚~十数枚のアライナーを一度にお渡しし、ご自身で交換を進めていただくため、歯科医院への通院は、通常1ヶ月~3ヶ月に1回程度で済みます。お仕事が忙しい方や、遠方にお住まいの方にとっては、大きなメリットです。
3. 始める前に知っておくべき、マウスピース矯正の4つのデメリット
素晴らしいメリットの一方で、必ず知っておかなければならないデメリットも存在します。
- 自己管理が治療結果を左右する これが最大のデメリットであり、注意点です。マウスピース矯正は、1日20~22時間以上の装着が、治療計画の絶対条件です。この装着時間を守れないと、歯は計画通りに動かず、治療期間が延びてしまったり、満足のいく結果が得られなかったりします。全ては、患者様ご自身の意志の強さにかかっています。
- 適応できない症例がある テクノロジーの進化で、対応できる歯並びの範囲は格段に広がりました。しかし、骨格のズレが非常に大きい場合や、歯を大幅に移動させる必要がある抜歯症例など、ワイヤー矯正の方がより確実で、効率的な結果を得られるケースも依然として存在します。
- 紛失・破損のリスクがある 取り外しができるということは、裏を返せば、紛失や破損のリスクが常にあるということです。特に、外食時にティッシュに包んで置いておき、そのまま捨ててしまった…というケースは後を絶ちません。作り直しには、追加の費用と時間がかかります。
- 毎食後の歯磨きが必須 アライナーを外して食事をした後は、必ず歯を磨いてから再装着しなければなりません。糖分や汚れが残ったまま装着すると、アライナーが歯を密閉し、唾液による自浄作用が働かないため、むし歯のリスクが非常に高まります。間食が多い方や、外出先での歯磨きを面倒に感じる方には、少し大変かもしれません。
4. マウスピース矯正、成功の鍵は「あなた自身」にあります
歯科衛生士として、多くの患者様の矯正治療に関わらせていただく中で、マウスピース矯正を成功させる方に共通している点があります。それは、**「治療に対するモチベーションが非常に高く、ルールをきちんと守れる」**ということです。
- 装着時間を絶対に守る
- 決められたタイミングで、次のアライナーに交換する
- アライナーと、ご自身の歯を清潔に保つ
- 紛失しないよう、ケースに入れて大切に管理する
- 治療のゴールを信じ、ゴムかけなどの指示も真面目に取り組む
マウスピース矯正は、歯科医師と患者様が、固い信頼関係で結ばれる「二人三脚の治療」です。私たちは、最高の治療計画と、最高のアライナーをご提供します。そして、患者様には、それを正しく使っていただくという、大切な役割を担っていただく必要があります。このパートナーシップが、成功への唯一の道です。
5. 治療中のパートナー。マウスピースの正しいお手入れ方法
毎日、長時間お口の中に入れるアライナーは、ご自身の歯と同じように清潔に保つ必要があります。
- 歯ブラシでの清掃:柔らかい歯ブラシを使い、歯磨き粉はつけずに(研磨剤で傷がつくのを防ぐため)、優しく磨きましょう。
- 専用の洗浄剤の活用:週に1~2回、入れ歯用やマウスピース用の洗浄剤を使用すると、目に見えない細菌を除去し、臭いを防ぐのに効果的です。
- 熱いお湯はNG:アライナーはプラスチック製のため、熱いお湯で洗うと変形してしまいます。必ず、水かぬるま湯を使用してください。
6. まとめ
透明で、取り外し可能。スマートで現代的なイメージのマウスピース矯正。その魅力的なメリットの裏側には、「自己管理」という、患者様ご自身の強い意志が不可欠である、という側面があることをご理解いただけたでしょうか。
【マウスピース矯正が向いているのは、こんな人!】
- 見た目を最優先し、誰にも気づかれずに治療したい
- 食事の制限なく、矯正期間中も生活を楽しみたい
- 決められたルールを、きちんと守れる自信がある
- お仕事などで、頻繁な通院が難しい
あなたの歯並びは、マウスピース矯正で治療できるのか。そして何より、あなたのライフスタイルや性格に、この治療法は合っているのか。まずは一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの理想の笑顔を実現するための、最適な方法を一緒に見つけていきましょう。

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